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ミント [薬草]

ミント

1. テルピノールはミントに多く含まれ、歯磨き粉、チョコレート、口臭防止剤、湿布薬など様々なところに利用されています。ミントには600種類ありますが、日本では「和薄荷(わはっか)」として古くから知られているものがあります。
ミントの総説が本で出版されていますが、値段が高く手することが出来そうもありません。
【文献1】  Brian M. Lawrence, "Mint : The Genus Mentha (Medicinal and Aromatic Plants - Industrial Profiles)," (2006/12/13),CRC Press, ISBN: 9780849307799. $129.95

2. ミントの文献を調べると、今から100年余り前に遡ることができます。しっかりとした構造を提案しているのは1948年のP. Z. Bedoukianの仕事があります。当時、活躍した装置は旋光計です。この名前は難しい装置に聞こえますが、果物の甘さを計る糖度計と同じようなものです。論文の緒論のところに示されているところでは、1904年にCharabotが花頭から取ったオイルの旋光度は+19°を示すけれども、植物全体からのものは-19~-22°であったことを報告しています。そこで、Bedoukianは、この原因は、Menthoneの酸化によってメントフランが生成するためであることを明らかにしました。実験操作中に酸化反応は良く起こるものです。化学者は得た結果が元のもの(この場合本来の成分)を反映しているか絶えずチェックします。ミントオイルの抽出操作はそれ以降色々工夫されてきています。
【文献2】 P. Z. Bedoukian, J. Am. Chem. Soc., 70, 621-622 (1948).

少し変なことに気づきました。それは、ミントティーの飲むと便通が良くなることです。ネットで調べると、リラックスすると副交感神経が働き、腸の蠕動運動が活発になると書かれています。では、便秘の人はどんどん飲むと良いと思いますが、慢性化する可能性があるという報告もありますので程度ものです。なお、余分なことですが、Twiningのハーブティーは一袋30円ほどしますが、ドイツ製のものは20円弱です。勿論、庭で育てるとミントは繁殖力が強く、葉や茎を採っても根で拡がります。しかも無料です。

3. ミントの重金属捕捉能力があることは知られていますが、土の中のクロムイオンについて最近調べられた結果は根には茎や葉よりも多く捕捉される事が分かりました。
【文献3】 Slavica Razic, Svetlana Ðogo, Chemosphere, 78, 451–456 (2010).
なお、ミントの成分は抽出法によって多少異なりますが、多い成分はテルピネオール(63%)です。抽出方法による大差はないので、通常の水蒸気蒸留が簡便であると言うことも示されました。
  β-Phellandrene 3.4 
  Menthofuran 10.6 
  Menthol 4.7 
  4-Terpineol 63.3 
  Neomenthyl acetate 4.8 
しかし、別の論文ではL-menthone(37%)とL-menthol(31%)となっています。超臨界CO2を用いた抽出ではSqualeneが多いことも示されました。
【文献3’】 Z. Zekovic, Ž. Lepojevic, S. Milic, D. Adamovic I. Mujic, J. Serb. Chem. Soc., 74, 417–425 (2009).

4. マウスを使った実験ですが、γ線照射による損傷をミント抽出物は防ぐことが報告され、抗酸化活性と何らかの相関があると指摘しています。
【文献4】 R. M. Samarth, M. Samarth, Basic Clin. Pharmacol. Toxicol., 104, 329–334 (2009).

5. 先に示したドイツのミントは良く調べられています。ドイツ語で書かれてはいるが文献もありました。
【文献5】 R. Schmatz, C. Schäkel, C. Dick, Gesunde Pflanzen, 61, 1–10 (2009).

6. ミントには抗菌活性があることは知られています。ペパーミントよりスペアミントの方が殺菌能力が高いと報じられていました。両者の成分の違いはペパーミントではメントール、メントンが多いのに対して、スペアミントでは、Limonin, Carvoneが多く含まれていることが対照的です。調べられた菌はプロテウス菌、サルモネラ菌、大腸菌でした。面白いことに、高沸点のポリフェノールを含む場合には単独の低沸点(揮発しやすい)成分だけよりも効果が高い。ある種の相乗効果(シナジー効果)を示すことを明確にしました。
【文献6】 Y. A. H. Osman, E. M. Yaseen, M. M. Farag, J. Appl. Sci. Res., 5, 1265-1276 (2009).
【文献6’】 S.F. van Vuuren, S. Suliman, A.M. Viljoen, Lett. Appl. Microbiol., 48, 440–446 (2009).

7. 最後に、エジプトの野牛のシラミ繁殖防止にミント抽出物が有効に働くことが示されました。試験管内の実験では、シラミの半減濃度は12.35%(濃度)であり、7.3%濃度での半減時間は15.39分でした。しかし、生体では、0.5-2分でシラミを除くことが出来ました。よく知られているシラミ駆除剤のd-フェノトリンでは120分要したと述べています。この報告が他の動物、特に家畜に対して有効であるかは書かれていませんでした。
【文献7】 H. F. Khater, M. Y. Ramadan, R. S. El-Madawy, Vet. Parasitol., 164, 257–266 (2009).


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